ソニーが開発・運営していたオンラインシューター『Concord』が、発売からわずか2週間でサーバーを閉鎖し、サービスを終了しました。9月6日付で正式に閉鎖され、販売本数は推定25,000本程度と非常に低迷しました。ソニーの内部スタジオによるタイトルとしては異例の短命であり、ゲーム業界でも注目を集めています。
F2Pへの移行は成功の鍵となるか?コミュニティでの議論
Circanaの執行役員、マット・ピスカテラ氏はこの事態を「前例のないもの」と表現し、他の早期に終了したゲームと比較しながら『Concord』の異質さを指摘しました。2019年に同様の問題を抱えた『Anthem』が販売面で成功し、現在でもプレイ可能であることを引き合いに出し、『Concord』が発売当初からプレイヤーに大きく拒絶されたことを強調しています。(参考)
特に話題となっているのは、プレイヤーからの「F2P(基本無料)モデルに移行すれば、ゲームは救われるのではないか?」という議論です。Twitter(𝕏)やReseteraなどのコミュニティで、この意見は広く議論されていますが、多くのユーザーは、仮にF2Pになったとしても成功する可能性は低いと見ています。一部のユーザーは「F2Pに移行しても、すぐにプレイヤーを集められなければ、ゲームはひっそりと終了してしまうだろう」と予想しています。
ピスカテラ氏も、『Concord』が復活する可能性については懐疑的です。彼は、「ゲームやIP(知的財産)がこれほど拒絶された状態では、回復は困難だろう」と述べつつ、「逆に言えば、現時点ではゲームに関する情報が少ないため、大幅なアップデートや新モデルへの転換で挽回できる可能性もある」とも述べています。
F2Pモデルへの移行は難しい?
エレクトロニック・アーツ日本支社長である野口ショーン氏は、サービス終了の原因について自身の視察を基に次のように分析しています。(参考)まず、『Concord』にはオンラインサービスを維持するための課金要素がほとんどなく、プレイヤーの獲得に成功しても、サーバー維持費やパッチ開発費用が重荷となった可能性を指摘しています。
さらに、野口氏は『Concord』がF2Pモデルへ移行することについても疑問を呈しています。F2Pに移行すること自体はプレイヤーの流入を促進する可能性がありますが、そのためには既存のゲームシステムの大幅な調整が必要であり、特に課金要素として導入されるであろうスキンや装飾アイテムの制作にもコストがかかります。そのため、F2P化は理論上可能でも、ソニーにとってはリスクの高い選択肢であると述べています。
最終的に野口氏は、『Concord』の今後の展開として、もっとも現実的な選択肢はPlayStation Plus(PS+)での配信であると示唆しています。PS+で配信することで、新たな投資を行わずにゲームを提供でき、同時に一定のプレイヤー層を獲得できる可能性があります。また、PS+での配信により、ソニーにとっても費用対効果が高く、損失を最小限に抑えられると分析しています。
『Concord』は、発売からの短い期間でサービス終了という厳しい結果となりましたが、その将来はまだ完全に閉ざされてはいません。ソニーがどのような戦略を打ち出すのか、特にF2Pモデルへの移行やPS+での配信など、業界全体が注目しています。