Bethesda Game Studiosは、『Skyrim』や『Fallout』、『Starfield』といったオープンワールドRPGで多くのゲーマーを魅了してきました。しかし、同時にこれらのゲームは、バグや技術的な問題が多発することでも有名です。
特に、リリース時に未修正のバグが多い点がファンから批判されることが増えてきました。これに関して、元Skyrimのリードデザイナーであり、『Starfield』のシステムデザイナーでもあったブルース・ネスミス氏が、VideoGamerとのインタビューで開発の裏側を語りました。
「バグの無いゲームは存在しない」元Skyrimデザイナーが語る現実
ネスミス氏によれば、Bethesdaのゲームが抱えるバグの原因は、そのゲームの複雑さにあります。Bethesdaの作品は、広大なオープンワールドであり、多くのシステムやNPC、クエストが相互に影響し合っています。そのため、開発段階で多くのバグが確認されても、すべてを修正することは現実的に不可能だといいます。
「開発者はゲームにあるバグをほとんど把握しています。ゲームの規模が大きいほど、すべてのバグを修正してリリースするのは不可能です」とネスミス氏は語ります。
「完璧なゲームは存在せず、特にBethesdaのゲームのように複雑な作品では、バグのないリリースは不可能です。リリース前に700件のバグがリストにあったとしても、すべてを修正する時間はなく、最終的に妥協してリリースされることになります」と続けました。
Bethesdaは、その複雑なゲーム体験を提供することで、過去にはある程度バグが許容されてきました。たとえば、NPCが壁の前で動かなくなるようなバグがあっても、BethesdaのゲームではそのNPCと17もの異なるインタラクションができるため、他のゲームよりも柔軟性があると評価されていたのです。
しかし、近年はプレイヤーの期待が高まり、完璧な品質を求める声が強くなっています。ネスミス氏も「Bethesdaはもっと磨きをかけるべきだが、ゲームプレイの多様性があるために、ある程度のバグは許容される」と述べています。
次回作でもCreation Engineは続投
さらに、Bethesdaのゲームエンジンである「Creation Engine」についても、ネスミス氏は触れました。
近年、他の大手スタジオがUnreal Engineに移行している中、Bethesdaがその道を選ばない理由は、Creation Engineが同社のゲームに最適化されているからとのこと。
ゲームエンジン自体は、ゲームにサービスを提供するためのものであり、そのエンジンが必ずしも優れているかどうかは、ゲームの出来に直接影響するわけではありません。
実際、Unreal Engineで作られたひどいゲームをいくつも思い出すことができるでしょうが、それはUnreal Engine自体の問題ではありません
BethesdaのCreation Engineは、元々2000年代初頭に導入されたGamebryoエンジンを基にしており、その後何度もアップデートと改良が加えられてきました。この長い年月をかけた改良の結果、Bethesdaの大規模なオープンワールドゲームに適したものとなっています。特に、『Fallout』や『The Elder Scrolls』シリーズのような、膨大なゲーム要素が相互に作用するタイトルには、Creation Engineが理想的だとされています。
ネスミス氏は、他のエンジン、特にUnreal Engineへの移行についても言及しましたが、そのプロセスがいかに困難であるかを強調しています。「Unreal Engineに移行する場合、Bethesdaのゲームを新しいエンジンに完全に適応させるには数年がかかるでしょう。移行そのものだけでも1〜2年、さらにその上で調整や最適化に数年かかる可能性があります」と語っています。
また、Creation Engineの技術的基盤が古いことも事実で、Bethesdaのプログラマーは一部のコードにアクセスできなくなっていることもあるようです。
しかし、ネスミス氏は、現在のCreation EngineがBethesdaのゲームに最適化されているため、新しいエンジンに移行するメリットは少ないと考えています。彼は「移行によるメリットがはっきりしない以上、現在のエンジンを使い続けることが、Bethesdaにとって最も効率的な選択だ」と結論づけています。
今後、Bethesdaがリリースする予定の『The Elder Scrolls VI』も、同様の技術的課題を抱えることが予想されます。Bethesdaの新たな展開は、今後も多くの注目を集めるでしょうが、技術的な課題が残る中で、どのようにプレイヤーの期待に応えるかが鍵となります。